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【書評】デジタルゴールド

まる
コインより食べられるもののほうが良いニャン!

先日読んだ「デジタルゴールド」の書評です。ビットコインの根っこの考え方を知りたいと思い読んだ一冊です。

デジタル・ゴールド--ビットコイン、その知られざる物語

デジタル・ゴールド--ビットコイン、その知られざる物語

ナサニエル・ポッパー
発売日:2016/09/23
Amazonの情報を掲載しています

概略

ビットコイン誕生からのドキュメンタリー。実話であり実在の人物が登場する。

ビットコインの誕生とその思想や機能

サトシ・ナカモトにより2009年頃に誕生。既存の通貨が抱える問題を解決したと言われる。「インターネット以来の革命的な発明」と呼ぶ人も。インターネットが既存の社会を大きく変えたように、ビットコインによる通過革命が世界の通貨事情を一新させると考える人もいる。

ビットコインは政府など何者も関与できない資産

ビットコインは秘密鍵を持った人間しか触ることができない。秘密鍵自体は単なる文字列に過ぎないが、それを個人個人で管理することで、国や政府ですら関与することができない。もちろん預金封鎖といった事もできない。またそもそも誰の資産かを追跡することができず匿名性が高い。

逆に既存の通貨は全て中央銀行の管理下であり、突然価値がゼロになる事もあり得るし、歴史的に幾度もあった。もちろん銀行口座と個人名といった様に誰の資産であるか、誰が資産を持っているか把握される。

過去日本でも終戦後、1946年2月に預金封鎖と新円切替が行われ、戦後の物資不足によりインフレも発生した。新円切替前の現金資産の価値はほぼゼロになり、これにより戦前の資産家が多くの財産を失った。文豪の永井荷風が有名。

政府が管理する通過はこうしたリスクを常に秘めている。現在の日本ではそういったリスクを感じることはほぼ無い状況だけれど、例えば中国の様な共産主義政府や、南米、アフリカの様な情勢不安定な国家では、突然自国通貨の価値が失われたり、預金封鎖などの可能性も依然現実的なリスクとしてある。

富の平等な再分配

ビットコインは新たに誕生した通貨であり、誕生時点では採掘などにより、誰もが平等にそれを得る権利があった。これにより既存の社会では一部の資産家が富を限定しているという状況を打破するとも考えられた。

ビットコインは手数料がかからない

既存の通貨は容易に送金ができない。本書の中でも、インターネットができて、Skypeで世界中の誰とでも話せるようになったのに、いざ送金となると、わずか1セントですら送ることができず馬鹿げているといった話がでてくる。

確かに既存の銀行を介したネットワークでは資金を簡単に送ることができない。これは時間的にも金額的にも。少額を送ろうとした場合、手数料のほうがはるかに高くなる。土日の送金はできない。平日でも時間制限がある。金融危機の際に、土曜に資金が必要になった外資が日本に資金提供を求め合意したが、緊急で送る方法がなかったといったくだりも本書に出てくる。

ビットコインには手数料なしで少額からも送れるメリットがある。加えて土日も無い。少額決済、少額送金による新たなビジネスチャンスにも期待される。

社会運動のツールとして

この様に既存の通貨を置き換える可能性を秘めた点や、仕組み上国や政府が管理することができない事から、リベラルを主張する人の社会運動としても用いられた。当初数年の発展はこうした社会運動としての側面も大きかった。

現実的な課題と問題

しかしここまで述べてきたような理想は現実的な問題に直面することとなる。

犯罪組織での利用

ビットコインの匿名性の高さは、逆に犯罪に利用されることとなった。実際ビットコインが発展してきたのも、裏インターネットで違法商品を売買したシルクロードの存在が大きい。

麻薬などの違法な商品の取引に使われる一方で、マネーロンダリングにも使われている。実際不法組織からビットコインで受け取り、それをドルなど既存の通貨に変えてしまえば、クリーンになってしまう。現在でも北朝鮮などが行っていると言われる。

これらはビットコインの匿名性の高さや政府や法の監督外であったことから起こったし、現在も引き続き起こっている。

取引所がひき起こす様々な問題

ビットコイン自体の送金手数料が無料だったとしても、現在はビットコインの取引所が代わりに手数料をとっている。もちろん料率が違うにしてもこれでは利用者にとっては従来と同じ構図。

ユーザーの多くはビットコインの複雑な仕組みを知ること自体は望まず、秘密鍵の管理を自分で行うことも望まなかった。そこでそれらを代行する取引所が出現した。しかしいくつもの取引所が突然閉鎖や消滅する事でユーザーのビットコインは失われた。一番有名かつ大規模だったのはマウントゴックスの事件だが、最近でも(資産が全額失われなかったけれども)コインチェックなどで似たような事件自体は起こっている。

この本の中でもアルゼンチンの資産家の老人の例があげられている。老後の生活資金をアルゼンチンでは自国通貨の価値が不安定であった為、資産を保全する目的でビットコインに投資した。従来はドルに換金していたが、政府がドルへの換金を制限したことや、ドルへの市中の換金レートが不利であったことからビットコインが投資先として選ばれた。しかしこの投資したビットコインは取引所の破綻で全額失われることとなった。

ビットコインの仕組み自体は堅牢で優れたものであっても、間を仲介する取引所のセキュリティやそこを管理する人間の問題により、今後もシステムの穴をつく様な問題は発生し続けるであろう。

富の均等分配は失われた

ビットコインの目的や可能性には富の再分配があった。しかし実際は貧しいものが均等に富を持つといった理想郷は実現されていない。

結局ビットコインでも、一部の者が集中して大量にコインを保有するという構図が依然としてあり、それは結局富の再分配ではなく、単にウォール街からシリコンバレーへの「富の移転」であった。

ビットコインは通貨か資産か?

ビットコインを通貨の観点で見た場合、現状はボラティリティが高すぎ、価格の変動リスクが大きすぎる。10分後、1時間後、1日後、10日後に価値が大きく変動してしまっては通貨としての要件を満たさない。

その為現在時点では通貨としてよりも、資産として考えられていると言えるだろう。

要は、ビットコインは通貨ではなく、(通貨としての機能は有すものの)金やダイヤモンドなどと同様の資産であるという事。また資産価値や投機的な側面で、中国などからは投機資金が集まっている現状。

将来的に価格変動が落ち着き、また既存の政府通貨との棲み分けが進めば通貨として利用される可能性は残る。ただしその場合も既存の通貨発行権の利権を壊すというわけではなく、電子マネーの一種になる可能性が高いと思われる。

ビットコインの構造的な問題点

ビットコインはセキュリティ的に堅牢であり、また全てのトランザクションが公開され記録されるため透明度も高い。そうした構造的な暗号強度による堅牢さや透明度の高さから、ビットコインネットワーク全体の安全性も保全されていると言える。

しかしシステムに問題が無いわけではなく、またこうした堅牢さから来る問題もある。

例えばシステム面では、返金を行うことができないという問題がある。一旦、他のネットワーク参加者の承認を受けて送金された場合、それを取り戻す手段は無い。要は送金のキャンセルはできない。

コインチェックの580億円のケースにしても、ネットワーク上にその資金が現在もあること、(その後分散されたとは言え)この奪われた資金がある場所はわかる。しかしその匿名性の高さ故にその所有者を特定することはできない。また取り消しができない為、明らかな犯罪であり、不正行為であるにも関わらず取り戻す手段が無い。これはビットコインネットワークが抱えるシステム的な問題である。

また秘密鍵を紛失した場合、誰の資金だと証明できたとしても取り戻す術は無い。暗号強度の高い秘密鍵により強固なシステムを構築している一方で、そこに人為的な問題が発生するとリカバリーできない。また秘密鍵を取引所が管理するといった場合、今度は取引所のシステム的、セキュリティ的な問題が発生するというパラドックスがある。

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