オプション取引の仕組みについてわかりやすく解説してみます。オプションの仕組みについて解説したページは多いのですが、どうも基本的な概念についてわかりやすく説明した記事はなかなか見つからないようです。
この記事では、オプションを理解する上でまず概念でつまづく人が多いと思うので、そこを重点的にまとめたいと思います。なお国内では唯一、SAXOBANK(サクソバンク証券)を利用することで、バイナリーではない通常のプットやコールといったFXのオプションを売買可能です。例えばドル円のロングにプットオプションでヘッジをかけるといった事が可能になります。
それでは本題に入ります。
目次
オプションの理解で混乱する理由
例えばよくある説明として「オプションは権利を売買するものです」と説明されます。もちろんこれは正しいのですが、これをベースに話を始めてしまうとわかりづらいのも事実です。
さらに「なるほど、コールオプションは上がると利益、プットオプションは下がると利益なんだな」と学んだところに、コールの(買いではなく)売り、プットの(買いではなく)売りもあると聞くと訳がわからなくなります。
オプション取引とは?
この後の章で詳しく解説しますが、先にまとめを触れておくと「オプションとは相場の変動リスクに対する保険」です。これを頭の隅に置いてこの後を読み進めてみてください。
まず身近な例を使いながら解説してみます。
生活する上では、生命保険や自動車保険など様々な保険を利用しますが、オプションも同様で保険の一種、「オプションは保険」と考えれば理解しやすいかもしれません。
つまり「オプションを買う」というのは「保険に加入する」事に似ています。逆に「オプションを売る」というのは「(保険会社の立場で)保険を売る」という事に似ています。
オプションの買いとは?
オプションの買いとは、「コールの買い」や「プットの買い」の事です。この意味は保険に加入するのと同様です。
保険に加入すれば、何か大きな問題があった時に保証されます。一方で毎月、掛け金として一定の保険料を支払わなければいけません。オプションもこれと同じような仕組みです。
「コールの買い」も「プットの買い」もどちらも「買い」なので保険に加入しているのと同様です。何か事態が発生し相場が(予測した方向に)大きく動けば利益を得ることができます。その代わり、オプションを買うには、「プレミアム(保険料)」が必要で、その保険料は何も起こらなければ保険金は支払われず掛け金として失われます。
つまりオプションの買いは、プレミアム(保険料、掛け金)を支払って変動リスクを買うという事です。
これを言い換えたのがオプションの買いは「損失はプレミアムに限定される一方で、大きな利益を受け取れる可能性があります」といったよくある説明です。
オプションの売りとは?
オプションの売りとは、「コールの売り」や「プットの売り」の事です。この意味は(保険会社の立場で)保険を売るのと同様です。
保険会社は、何か問題が発生すると「多額の保険金」を保険加入者に支払います。その代わり毎月保険の加入者からは掛け金として保険料を受け取ります。また何もなければ保険料は受け取りますが、保険金は支払いません。これは改めて言うまでもなく皆さんご存知の事です。
「コールの売り」や「プットの売り」といったオプションの売りもこれに似ています。何かの事態で相場が大きく動き、支払い条件に一致すると、変動に応じ理論的には無限大の損失を支払う必要があります。しかし一方で変動がなければプレミアム(保険料)を受け取ります。
ただまだこれだけだと保険とは似ているとは言えません。しかしもうひとつの重要なポイントにより保険に特徴が似ることとなります。
それは、プレミアムを受け取る「オプションの売り」が利益になる確率が圧倒的に高いという事です。
この勝率の差により、通常は高い確率で掛け金を受け取る「オプションの売り手」と変動リスクに保険をかける「オプションの買い手」という立場が明確になります。
オプションの買い戦略
オプションの買い戦略とは、起こらないだろうけれど、起こったら大きい事に賭ける戦略です。例えば相場の上昇中に「大暴落に賭ける」といった事です。
この戦略で知られるのが、ブラックスワンで有名な「ナシーム・ニコラス・タレブ」です。彼は金融危機の様なイレギュラーなイベント(テールリスク)の確率は人々が考えるよりも、また正規分布で示される確率よりも遥かに高いと主張しています。
実際これを元に彼のファンド「エンピリカ(既に解散)」では常にブラックスワン的なイベントを狙った、オプションの買いがベースでした。そして実際彼のファンドは大暴落相場で多額の利益を叩き出しています。
ただひとつ注意したいのは、これを実行するのは簡単ではないという事です。テールリスクに賭けるという事は逆に言えば、普段ほとんどの日はオプションのプレミアムの支払いでマイナスです。日々積み重なる損益に耐え、いつか起こるであろうブラックスワンを延々と待つ必要があります。
これは資金面/メンタル面で普通の人ではまず無理です。実際タレブ自身、日々そういった葛藤に悩まされており、彼のファンド「エンピリカ」の社員(タレブは社員とは決して言わないとの事ですが)は、常にタレブを励ます、それが仕事でもありました。
タレブが実際に行った戦略も、例えば米国債の様な確実なリターンに多くを投資する一方で、残りをテールリスクに賭けるといった「バーベル戦略」でした。これは確実なリターンを得ながら、リスクに投資する事を組み合わせた戦略で、ただ単純にリスクに掛けても難しいという裏返しでもありそうです。
オプションの売り戦略
オプションのスペシャリスト、パシフィック証券のフロアトレーダー「リチャード・フリーゼン (Richard Friesen)」は逆の考え方です。
彼はリスクは過剰評価されるという考え方です。特に直近のリスクを過剰評価し保険を払いすぎると考えています。実際何かのデータやニュースを元に「近いうちに大暴落は起こる」といった説はよく流れます。
こういった時、恐怖感からオプションが買われ、オプションのリスクプレミアムが上昇します。言い換えれば掛け金である保険料が上がるわけです。しかし実際には何も起こらない事がほとんどです。フリーゼンはそうしたタイミングを狙い、オプションの売り手に回り、確実なプレミアムを獲得します。
この辺の詳しい話は、書籍「脳とトレード」をご覧ください。
同じテールリスクに対しても見方の違いで間逆な戦略が取れることを示しました。
まとめ
オプションは変動リスクに対するある種の保険。保険と絡めた説明はオプションを理解する助けになるはずです。なお何か誤りや追記すべき内容があれば今後随時加筆修正します。
その他用語
コール・オプションとは
単純に言えば上昇すると利益になります。要は急激な上昇の可能性に保険を賭けるといった意味でもあります。
プット・オプションとは 上昇に保険をかけるか、下落にの違い
単純に言えば下落すると利益になります。要は急激な下落の可能性に保険を賭けるといった意味でもあります。
プレミアムとは
オプションの価格の事ですが、保険料と考えると理解しやすいです。
アウト・オブ・ザ・マネー
オプションの価値が無い状態。要はオプションの買い手が損失(掛け金没収)、売り手が利益の状態です。
イン・ザ・マネー
オプションの価値が無い状態。要はオプションの買い手に利益があり、売り手が損失の状態です。リーマン・ショックの時の金融危機でこうした記述があります。
「10月10日は日経平均オプション10月限のSQ値が7992.60でプットオプションがすべてがイン・ザ・マネーとなる異常事態」
これは大暴落で全てのプット(売り)のオプション(の買い)が、利益になった異常な状態という意味です。