トレードにおけるリスク管理として、ポジションサイズについてはよく語られる事が多いのですが、口座の資金管理についてはあまり語られる事が無いのでまとめてみます。個人的にはトレードの勝ち組と負け組を分けるのは、手法ではなく、リスク管理の面が大きいと考えています。
この記事では、コツコツドカンを防ぎ、逆にコツコツと資産を増やす口座資金管理手法をご紹介します。
目次
トレードは出金してはじめて勝ち
まずトレードにおける勝ちを定義したいと思います。
個々のトレードで勝つというのは誰にでもあることですが、それが月間なり、年間なり、それ以上の単位で勝ち続けるトレーダーというのは極少数です。この「期間に対しての資産増加」でトレードの勝ち負けを図るというのは確かに一つのやり方ではあります。
しかしトレードの最終目的は(個人)資産を増やす事であり、もっと直接的に言えば「お金を増やす」事なわけです。そういった意味では、たとえトレードに勝った/勝っていたとしても口座に入れたまでは勝ちとは言い切れません。実際にお金に換金、つまり口座から出金して初めて勝ちが確定したと言えます。
なぜこんな事に拘るかというと、この記事のテーマであり、この後触れていく口座の資金管理に関わるからです。「口座に入れておいても一緒だよ」という人もいるでしょうが、これは精神論では無く、技術的な部分で明確な違いがあります。
すべての卵をひとつのカゴに入れるな!
「すべての卵をひとつのカゴに入れるな! ("Don't put all your eggs in one basket")」という英語の格言があります。ご存知の方も多いと思いますが、これはトレードにおいてよく用いられる格言で、比喩的に「1度のトレードにすべてを掛けてはいけない」という意味で用いられたりします。
トレードは将棋や囲碁の様な完全情報ゲームではなく、麻雀の様な不完全情報ゲームです。不完全情報ゲームは、運の要素が介在するため、1度きりの勝負であれば素人がプロに勝つことも普通にあり得ます。トレードも同様でどんなに優れたトレーダーでも全勝はあり得ません。ですから「すべての卵をひとつのカゴに入れる ("Put all your eggs in one basket")」やり方をすればいつか確実に負け、資産は失われます。
そしてこれはトレードにおいてポジションだけの話ではありません。
口座に入れる資金は制限すべき
これは同様に口座資金においても当てはまります。投資に利用できる金額を全て証券口座に入れてしまうのは愚策です。目標額やそれに必要なロットが計算できていれば必要な口座資金も計算できます。逆に計算なしにすべて資金を入れて、複利の効果も使って、雪だるま式に資産を増やしたいというのは欲張りすぎです。
トレード戦略を練って資産増加の計算をしない場合でも、口座に入れる資金を制限する事には以下の様なメリットがあります。
ロット増大を防ぐ
FXでは口座の証拠金維持率で、今後どれだけポジションを取れるか確認することができます。日頃から維持率が気にならないくらいポジション管理を徹底していれば問題は少ない(人間心理を考慮すると問題が起こらないとは言えない)ですが、維持率に余裕があると、ついつい別の銘柄をトレードしたりやトレード中のポジションサイズを増やしてしまうといった事をしがちです。
また事前に決めたトレード戦略を絶対に守れる方やナンピンはしないと徹底している方は別ですが、大抵はポジションが逆行した場合に資金に余裕があると、先のポジションをカバーしようとしてナンピンでロットを増やしたりしがちです。
しかしこれらはそもそも口座に資金が無ければ「起こらない/起こりえない」事です。その回のトレードに必要なだけの額しかなければ、ポジションを増やすこと自体ができません。
リスクを限定できる
口座に1回のトレードに必要なだけ資金を入れるようにすればリスクを限定することもできます。
理論的にはゼロカットが無いため、口座に資金があっても無くても同じ様に思えますが、実際はロットがむやみに増やせない事や、また証拠金維持率が100%を下回れば強制ロスカットされることからリスクが限定されます。ゼロカットが影響するのは、ストップが効かない様な異常事態、過去で言えばスイスフランショックやポンドのフラッシュクラッシュの様な特異なケースに限定されます。それ以外はリスク管理が有効です。
口座資金を限定することで、ロットの増大を防ぎ、資金の大半を1度のトレードで失うような大敗が防げます。
例えば1000万の自己資金があるとして、50万円を口座に入れるとします。すると(異常時を除けば)、最悪全額を失ったとしても(そういう事は証拠金維持率の仕組み上起こりづらいですが)、リスクは「総資産の5%」に限定されます。これがもし1000万全額を入れていた場合、5%以上の大きな損失は容易に発生し得ます。
仕切り直しがしやすい
トレードは不完全情報ゲームであり運的な要素も絡みます。常に勝ち続けることはできず、必ず負けが発生します。負けを抑えることがトータルでの資産増加に直接繋がります。
口座資金を限定すると、予めリスクが限定される為、1回の勝負での大敗が無いですし、逆に(リスクが限定されているので)思い切った勝負を挑めます。そして負けが発生した時も(リスクが限定されているので)諦めがつきやすく、実際他の資産に影響はありません。大敗によって無駄に大きく資産を失い回復不能になることがありません。
また勝ち負けがある意味明確な為、精神的に仕切り直しもし易いのも利点です。「今回駄目なら、また次!」といった形の勝負ができるので、メンタル面にも優しい上、より冷静な気持で勝負も挑め、そしてこれは確率で勝負できる事を意味します。分散して勝負することで、勝てる手法を持っていれば、個々のケースで負けても、確率的に勝負でき最終的に収益を上げることに繋がります。
まとめ: コツコツドカンの起こらない仕組み作り
「口座に入れる資金を限定する」、「勝った分はすぐに/定期的に出金する」。
これを繰り返すことで
- コツコツドカンの様な「大敗を防ぎ」
- トレードがうまくいかなければ「潔く負けを認め」
- 負けたときは、新たな資金を入金し「完全仕切り直す」
- 勝ち分は出金して、コツコツ「総資産に積み上げ」ていく
事が可能になります。
口座資金の運用をうまくやるだけでも、コツコツドカンを防ぎ、逆にコツコツと資産を増やすことができる様になります(もちろん勝てる手法も同時に必要です)。記事がご参考になれば幸いです。
なおしばらくは週一ほどで、トレードに勝つ仕組みや考え方の記事をまとめていきたいと思っています。気に入ってもらえればブックマーク等でぜひチェックして下さい。今回の記事含め、文字が多く申し訳ないですが、じっくり読み込んでもらえればそれなりに得るものがある内容かとは思います。それでは。