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【書評】アフター・ビットコイン

まる
まるは本を読んでるよりも寝ていたいニャン!

先日読んだ「アフター・ビットコイン」の書評です。著者は中島真志氏で、日本銀行や国際決済銀行での職歴や、金融庁、経産省の委員としての経歴から金融やマネーに関しての造詣は相当に深い方です。

ビットコインについては以前に「デジタルゴールド」で、誕生からの歴史を学びました。

デジタルゴールドには2009年のビットコインの誕生から、2014年までの出来事がノンフィクションで書かれていますが、この「アフタービットコイン」は、誕生以降から2017年夏までの出来事や今後の見通しが書かれている一冊です。

目次

ビットコインはバブルなのか?

「アフタービットコイン」の序盤では、ビットコインやアルトコインの現状や未来について語られます。

現状では貨幣としては利用されていない

例えばビットコインは現状、貨幣というよりも、資産価値として投資されています。特に中国からの資金逃避先として利用されてきたことから価格が上昇しました。しかしその日々の価格変動が大き過ぎる事により、貨幣としての流通は逆に難しくなっているといった指摘がなされています。

マイニングの継続性への懸念

マイニングの継続性への疑問も投げかけられています。ビットコインの採掘可能枚数が減り、マイニングの報酬(リワード)が減る中で、いずれ電力などの採掘コストがリワードを上回り、採算が取れなくなる段階が来るというものです。マイニングが止まるという事は、決済や送金時の承認も行われなくなる事を意味し、それはビットコインが機能しなくなる事を意味します。これが起こるのは理論的には遠いように見えますが、いくつかの理由で実際に起こるのはもっと早いかもしれないという指摘がなされています。

不法行為に使われた事や取引所トラブルからのイメージ失墜

シルクロードでの不法売買に使われてきた歴史や、マウントゴックスといった取引所破綻の騒動、現在も繰り返される分裂などから悪いイメージも根深く、当初考えられた様な、既存の貨幣を置き換えるような事は起こらず、むしろもはやビットコインの貨幣としての社会実験は失敗したといった意見が紹介されています。

ビットコインの本源的な価値は?

ビットコインの本源的な価値については、BISの報告書やその他の研究からゼロである可能性を指摘しています。BISの2015年の報告書では、仮想通貨の本源的価値はゼロであると断言されており、その価値は将来的にモノや法定通貨に交換できるという信頼のみに基づくとされています。また他の研究でも利子、配当、元本はなく、基礎的価値はゼロとされていると触れられています。

ビットコインの評価

著者は現在のビットコインはバブルであるとし、ビットコインの将来性については、貨幣としても資産としてもネガティブな評価となっています。

しかしこれが相場の面白いところで、本書の中では中国当局の規制により中国からの資金退避先は難しくなったという事が触れられていますが、ビットコインが現在時点までで、最大レベルの上昇と高値を見せたのは2017年末からで、その規制の後の出来事です。

ブロックチェーン

一方仮想通貨を支える期間技術であるブロックチェーンについては本物であるとし非常にポジティブな評価です。ブロックチェーンは、メインストリームである金融業務のあり方を変えるとし、特に国際送金や証券決済での利用が進むと指摘しています。実際既に大手銀行が参加した実証実験が行われており、一部は導入段階に来ています。

ブロックチェーンとは?

ブロックチェーンの概要は、下記の様なものです。

ブロック → 時間毎に生成される取引データの塊
チェーン → そのブロックを鎖の様に繋げること

トランザクションがハッシュ化され繋がるという意味では、開発者の間で使われるgitの様なリポジトリにイメージが近いとも言えますが、ブロックチェーンの機能はそれだけに限らず、より堅牢、高度なシステムとなっています。

ブロックチェーンの特徴やメリット

ブロックチェーンの特徴やメリットは以下の様なものが紹介されています。

  • 改ざんに強い
    改ざんしようとすると過去全てを書き換える必要があるので現実的にはほぼ不可能
  • 分散型台帳記録(dlt)で障害に強い
    各ノードでデータが分散されて保存されているため、全体への攻撃が難しい
  • コストの低減(現在の1/10との予測も)
    現在の銀行では口座情報やそこからの資金移動の情報などを全て個別に記録しているけれど、ブロックチェーンを利用すればそれらの少なくとも一部は個別に持つ必要が無くなるため、コストが大幅に下がる事が期待できる

通貨の電子化は必然

日銀では1990年頃から密かに電子化の研究を行ってきたものの、その中ではいくつかの課題にぶつかっています。

法定通貨との違いや壁

例えば現在でもSuikaなどいくつかの電子マネーがありますが、これらは法定通貨と大きく異なる部分があります。それは転々流通性が無いということで、法定通貨であればお金を誰かに渡し、それをまた誰かが使うといった事が可能ですが、電子マネーではできません。電子マネーでできるのはモノとの交換だけです。

これは例えば電子マネーに転々流通性を持たせた場合、それらがコピーされた時にどうするかといった改ざんや安全性に対する疑念があり、それを防ぐためには、毎回電子マネーの利用に中央システムでのチェックが必要となります。

要は転々流通性の確保する為には、安全性を犠牲にする必要があり、それらは既存のシステムでは実現が難しいものでした。

しかし現在の仮想通貨の登場で、これらは技術的には可能となりました。ブロックチェーンをベースとした仮想通貨であれば、改ざんに対する安全性やシステム全体の堅牢性は担保されている為これは可能となります。

管理社会を招く危険性

ただし引き続き課題もあり、電子化し全ての記録を残すということは、匿名性が失われる事を示し、中央銀行やそれを管轄するであろう政府が個人の資産や取引のデータをいつでも見ることができてしまうという事を意味します。つまりさらなる管理社会へと進んでしまう危険性があり、そこで何が起こるかは不透明な部分が多く、それらの危険性からの反対意見も根強いと考えられます。

電子化は必然

著者は人類の歴史で通貨は進化(金属貨幣 → 鋳造貨幣 → 紙の貨幣)してきており、今後の電子化も必然であるとしています。ただしまだ乗り越えなければならない課題も数多く残っている様です。

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