この記事は、FXやCFD、仮想通貨などでは手数料的な部分がトレードに与える影響は大きいにも関わらず、それらは過小評価されるといった話です。これはFXなどは、株式取引と異なり明示的に手数料を負担するといったケースは少なく、普段意識されない状態で取られている事から生まれます。
目次
FXやCFD、仮想通貨などの見えない手数料(1)とは?
例えば現在ポンド円は、某社のレートで、[146.404] - [146.414] と表示されています。この表示はご存知の通り、ポンド円をロングする(買う)場合のレートは146円414銭であり、ショートする(売る)場合のレートは、146円404銭であることを示しています。
ここには、146.414 - 146.404 = 0.01 の差があるのがわかります。
もう少しわかりやすく書くと、例えば、今この瞬間に、ポンド円を1万通貨買うと、1,464,140円のポジションとなります。それを即座にこのレートで売ると、1,464,040円で売れます。つまり差し引きマイナス100円です。
1秒も経たないうちに瞬間的に売買しても、このケースでは1万通貨でマイナス100円となるわけです。これは1回のトレードでこれだけの手数料がかかるということです。同様に2万通貨であればマイナス200円、5万通貨であればマイナス500円、10万通貨の場合はマイナス1000円です。
これがいわゆるスプレッドで業者に対する手数料です。FXなどでは、明示的に手数料を支払う必要はありませんが、この様にトレードするだけで実は知らないうちに業者に手数料が取られているわけです。
手数料はこれ以外にもあります。
見えない手数料(2)
業者の手数料と呼ぶかは微妙ですが、スリッページもユーザーからすれば、基本的には利益を削り、損失を増やす要因であり、手数料と考えるべきです。例えば先程のポンド円のレート([146.404] - [146.414])を例とします。
先程のスプレッドの手数料解説の部分では、売買する場合に、この表示されているレートでポジションを取れることを前提としていました。確かにデモトレードであればこれはほぼ正しいです。特に成行ではなく、指値/逆指値においては。しかし実際の本番環境でのトレードでは残念ながらそうは行きません。
例えばこの状態で、ロングをエントリーすると、[146.420] といった具合に「基本的に不利な方向へ」すべりが発生します。これがスリッページで、この業者はよく滑るといった具合で俗に言われたりします。
続いて即座に決済してみます。[146.420] のロングを決済すると、今度は [146.398] といった具体に決済の時にもスリッページが発生します。もちろんこの滑り幅は一例です。しかし例えば指標の後などのボラティリティが高い局面では、もっと大きく滑ることはざらにあります。
この例で改めて手数料を確認してみると、1万通貨の場合で220円 (1,464,200 - 1,463,980 = 220)の手数料が1回のトレードでかかります。10万通貨であれば1回のトレードで2200円です。先ほどより手数料が増えたことがわかります。
またこれは「1回のトレードに対して」ですので、例えば1万通貨でも100回トレードを行えば、この条件であれば、22,000円の手数料がかかることとなります。大きいですよね。
この様にスプレッドとスリッページという見えない手数料がトータルの損益に与える影響は実は非常に大きいです。しかもFXの場合、株と異なり、見えない手数料となっていますので、トレーダーは気づかないうちに手数料を負担しています。ある意味たちが悪いとも言えます。
トレードは丁半博打と同じで確率50%?
少し話を変えますが、色々なところでよく質問を見かける内容に「FXは丁半博打と一緒で、勝率は50%でしょ」といったものがあります。これは色々な面で誤っているのですが、この記事の「見えない手数料」がその一つの理由です。
カジノのルーレットの0や00みたいなもので、FXでは見えない手数料がありますので、本番環境でのトレードは確率的にも50%にはなりません。勝率は低くなり、負けの確率が必ず高くなります。大数の法則に従えば、丁半博打でのトレードは確実に負けると言えます。
なので感情を排除して、単純にロング/ショートをトレードするEAを作った場合、統計的に考えると手数料分だけ必ず負けます。
EAのフォーワードテストが当てにならない理由
ただしこれには落とし穴があります。スリッページが起こるのは基本的に本番環境、すなわちライブ口座でのトレードのみであるという事です。デモトレードは業者の中で完結していますので、スリッページが発生する要因自体がほぼありません。業者に注文が届いた時点で状況に関わらず即約定です。
しかしライブ口座では、ロングの反対側には、ショートする人間がいるわけです。ですので理論的には、とある価格での売買注文は必ず成立するとは言えず、ロングならショート、ショートならロングする人間がいて初めて成立します。いなければ相手がいるレートまで価格が変動し約定します。また本番環境では、業者、そして市場に注文が届くまでのタイムラグがあり、その間もレートが動きます。これら要因で本番環境では損益では無視できないスリッページが発生します。
わかりやすい例としては、指標時やレンジブレイクの時です。それらはどちらもボラティリティが大きくなり、時に注文をしても約定しなかったり、約定しても予想外のレートでといった事が通常です。しかしデモ環境ではそれは起こらず、常に指定されたレートで100%約定します。
これが大きく影響するのは、システムトレードのフォーワードテストの結果です。EAのフォーワードテストは通常デモ口座で行われています。すなわりスリッページが基本的にありません。
そしてこういった事が起こります。フォーワードテストの結果が良いから購入し、いざ自分の口座に適用してみると「期待したパフォーマンスが全く出ない、それどころか損失になる」。しかしこの時も依然としてフォーワードテストの結果は優秀だったりします。
これはスリッページの罠を知らないと防げません。逆に知っておくと余計な出費を防げます。上記を理解すればブレイクアウト系のEAがなぜ本番環境でパフォーマンスが悪くなるかはすぐにわかります。
反対売買がうまくいかない理由もコレです
トレードはよく9割が負けると言われています。なのでピンとくる方は「じゃあ負け組の逆のポジションを取れば勝てる!」、もしくは自分がコツコツドカンでよく負ける場合「自分の反対のトレードを(自動的に)すれば勝てる」と思ったりします。
しかしこれも同様の利用でうまくいきません。反対売買がうまくいかない理由のひとつがこの見えない手数料です。
例えば自分の反対売買をする場合、パフォーマンスが悪いいつもの自分の損益には「見えない手数料が加算されています」。この段階で反対売買側は加算されていません。
しかしいざ実際に反対売買を行う場合「逆に見えない手数料が加算されます」。ですからよほど負ける人の反対売買でなければまずうまくいきません。また確実に負ける方法というのは確実に勝つ方法と同じくらい難しいです。
見えない手数料をできる限り乗り越え損益を改善する
これらの「見えない手数料」がトータルの損益に与える影響は実は非常に大きいです。逆にいうとこの部分を改善するだけでも目に見えて収益が改善します。
パンローリング社が提供するような海外の著名トレーダーの書籍では、手数料の問題について必ず触れられています。「手数料の少ないブローカーを選ぶことが大切」といった形で。「古い時代の話でしょ?」と思わないで下さい。もちろんかつてはさらに手数料が高い時代があったのも事実ですが、現在も無視できるほどは小さくありません。
勝っているトレーダーというのは実はこうしたある意味細かいように見えるポイントについても非常に重視しています。実際この「見えない手数料」の問題を改善する方法は実は単純で「より有利な証券会社を選ぶ」という事だけです。トレードで例えば今より1%でも収益を上げる手法を手に入れるのは難しいですが、手数料は単純な問題なので、容易かつ安定的に、かつ確実に、ある程度の収益改善に繋がります。
例えばサクソバンクが先月2018年5月に公表した資料は興味深い内容です。指標時を含めたスプレッドに対してのコストが細かく分析されています。
サクソバンク証券、高い約定率、スプレッド幅で優位性
~ 米国雇用統計発表前後の米ドル/円、ユーロ/米ドル取引で矢野経済研究所が調査~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000023116.html
確かに証券会社を選ぶ上では、こうしたスプレッドやスリッページといった手数料の面は地味ですし、実際話を聞いても多くの人はあまり重視されていない様です。どちらかと言えば、DVDやその他何か物がもらえるキャンペーンで選んだといった話のほうがよく聞きます。ただトレードの本来の目的はより収益を上げることです。その点はぶれない様にする事が大切です。
なお、 各社の時間帯別スプレッド比較は、MT4口座のみですが、fx-onのサイトで見ることができます。
まとめ
FXやCFD、仮想通貨のトレードでは見えない手数料があります。見えない手数料を過小評価すると損益が悪化します。逆に見えない手数料を改善することで、確実にかつ安定的に、ある程度の収益改善に繋がります。